言葉が生まれる際の形に触ってみたくて、ポリエチレン樹脂を口内に入れ発話し型取りを行った。
言葉の形は非常にゆっくりできあがる。
喉の奥や歯の裏、舌の周りにポリエチレン樹脂がはりついていく息苦しさと熱さに耐えながらことばをはきだそうとすると、低いうめき声のようなものが喉の奥から出てくる。
口内や舌が発声のかまえをとり言葉が発されるとき、自分の意識はどこか置き去りで、身体は言葉を発するための装置に変容する。吐き出された言葉の形は、まるで人間の骨のようだった。
Touching a shape of the moment when words are created is something I wanted to do, and I molded polyethylene resin into my mouth.
Shapes of words are made very gradually. Polyethylene resin goes all over my mouth, to the back of teeth and throat, and all around tongue. It is literally hot and breath-taking. I tried to spit out some words with the discomfort and heat, and there comes out the low groaning voice from the bottom of my throat.
When mouth takes a ‘posture’ to utter a word, self consciousness is left alone somewhere, and body changes itself to a device to utter a word. The shape of the word spat out seemed somehow a human bone.
KUNST ARZT では、3年ぶり3度目となる林葵衣の個展を開催します。
林葵衣は、主に“唇拓*”による音声の保存、発音する内容と自身との関係性を考察するアーティストです。
本展は、唇の動きとともに音声生成の要素である口内の形状に着目し、口内で硬化させたポリエチレン樹脂彫刻作品で構成します。
“唇拓*”は、柔らかい唇を削るという要素があり、実は過酷な身体表現でもあるのですが、この試みはさらに大きなリスクを覚悟して生み出された“言葉の彫刻”です。
言葉を失いに来てください。
*唇拓とは、言葉を発声した際の口の動きを口紅の痕跡でタブロー化する試み。
KUNSTARZT 岡本 光博
Design|Kenta SHIBANO
Photo|Yuki MORIYA
Translated|Kazumasa UEDA